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私には今だからどうしても弾きたい曲があり、今までずっと弾きそびれていた曲がありました。

ドビュッシーの名曲『月の光』

この曲を今、心から弾きたいと思ったのです。

誰のためにって、自分のために。

昨年今年と祖母祖父が天国ヘ旅立ったことで、そんな気持ちになりました。

『月の光』と向き合って数ヶ月、
無数のピアノの音色の中で、私は『自分だけにふりそそぐ綺麗な月の光』を自分だけの音で奏でたいと思いました。
そして今月14日には、自宅教室の発表会で演奏することも考えていました。

ところが音を見つめているうちにどんどん解らなくなって、発表会ちょうど3日前、練習するのを止めてしまいました。

そして1人で祖母祖父のお墓に行って手を合わせてきました。


発表会当日、解ったことがありました。

月の光は、私一人にだけふりそそぐのではなく、地球上のすべての者に平等にふりそそいでいる。
それがドビュッシーが表現したかった『月の光』だということ。
その月の光を様々な思いで、形で、見ているのが私達人間。


発表会では、祖母祖父と一緒に見たあの日の月の光を思いながら弾ければそれで良いと思う気持ちになりました。

そして、発表会で『月の光』を奏でて、曲の終わり頃に思ったこと、それは、もう祖母祖父と一緒に月を見ることは出来ないんだということ。


発表会後に見た夜空には、真ん丸い輝くお月様がありました。

それを見て、私の父は
『地球には長い歴史があって、その地球の時間に計算したら私達が生きている時間は本当にわずかな時間。そのわずかな時間を生きているってことはすごい事なんだよな。』と言っていました。

真ん丸いお月様を見て、父も、父の両親と共に見た昔の月を思い出しているのではないかなと、感じました。 

自分のために、『月の光』と向き合った数ヶ月。

私はかけがえのないことを知った気がします。

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